(この記事は、2023年3月25日に作成、サイト整理により2023年8月29日に転載しました。)
自動車を所有しているとメンテナンス費用が欠かせません。そのなかでも意外と忘れがちなのがバッテリーです。突然のバッテリーあがりでエンジンがかからないトラブルは多くの人が経験していると思います。そのようなバッテリーのトラブルを未然に防ぐ方法、トラブルが起こってしまったときの対処方法などをお伝えします。(今回は、エンジン車用の鉛蓄電池のお話です)
バッテリーの基礎知識
バッテリーのしくみ
鉛蓄電池は、電極に鉛を用いた充放電が可能な二次電池です。正極に二酸化鉛、負極に鉛が使われており、希硫酸と鉛の化学反応によって電圧が発生し、電気が蓄えられます。電解液中の硫酸イオンが電極に移動すると放電され、逆に、電極から電解液中に硫酸イオンが移動すると充電されます。(詳しくは動画を見てください)
バッテリーの劣化
- サルフェーション 負極表面では放電によって鉛から硫酸鉛に変化しますが、硫酸鉛は時間が経つと安定した結晶構造に変化していきます。硫酸鉛は一度結晶化すると、電気を通しにくくなるため、充電しても鉛に戻りません。この硫酸鉛の結晶化は一般的にサルフェーションと呼ばれています。サルフェーションが負極の表面に付着すると、電極と電解液の反応面積が小さくなり内部抵抗が増加します。また、電解液中の硫酸イオンも硫酸鉛になったまま元に戻れないため、電解液の濃度も低下します。そのため、電池電圧が低くなり、どんなに充電しても初期の電圧に戻らなくなってしまいます。充放電回数の増加や充電されずに長期間放置されたりした場合の劣化原因の多くは、負極表面での硫酸鉛の結晶化(サルフェーション)です。
- 正極の腐食 正極では、活物質から電流を取り出す格子に、アンチモンやカルシウムなどを混ぜた鉛合金が使われますが、電池の充電によって格子は腐食して細くなったり、伸びたりして活物質との接触が悪くなります。そのため、内部抵抗が増加して取り出せる電力が減少します。この現象は充電状態で進み、さらに温度が高いと加速されます。過充電による劣化原因の多くは、正極格子の変形が原因です。
- ■活物質の脱落 正極活物質の二酸化鉛は、結着力が弱いため多孔質のチューブに詰めたり、格子に詰め込んだりして固めています。しかし、充放電によって体積変化が起きるため、徐々に軟らかくなって隙間ができ、電流を集めるための芯金や格子から剥がれてしまいます。一度剥がれてしまうと元には戻れないため容量が減少します。
バッテリーのトラブル
バッテリートラブルを予防しよう
- バッテリーの寿命 バッテリーが寿命になる原因は、経年劣化、電装負荷が多いことによる劣化、温度環境が厳しいこと(高温環境)による劣化、放電気味使用や長期放置による劣化、液量不足による内部劣化などがあります。使用環境により寿命は大きく変わりますが、2~3年経過すると劣化するバッテリーが多くなります。
- バッテリー上がり防止対策 バッテリー上がりの原因で一番多いのが長期間エンジンを始動しないことによる自然放電です、放電時間が長くなるとサルフェーションが進み急速にバッテリーが劣化します。 また1週間に一度アイドリングを数分程度では、充分に充電することができないのでバッテリーは劣化します。こまめに走行することでバッテリーの寿命を延ばすことができます。
- このような症状があれば要注意
- エンジン始動が遅い—エンジンの始動には、とても大きな電流が必要です。劣化したバッテリーでは瞬間に大きな電流を流すことができなくなりエンジンが始動するまで時間がかかるようになります。
- アイドリングストップが作動しない—バッテリーの電圧が低いときはアイドリングストップ機構が作動しません。いつも作動していた状況でアイドリングストップしないことが続くようならバッテリーが劣化しているかもしれません。
- オーディオから「ヒューン」というノイズが聞こえるようになった—エンジンの回転に同調して聞こえるノイズをオルタネーターノイズといいます。オーディオ関係を変えていないのに急に聞こえるようになったら、オルタネーターの発電量が以前より増えていることが考えられます。バッテリーの劣化を疑いましょう。
- ヘッドライトが暗い—LEDタイプのライトでは確認できませんが、電球タイプのライトならバッテリーが劣化するとヘッドライトが暗くなったり、ウインカーの点滅に合わせて明るくなったり暗くなったりという症状が発生します。
バッテリーが上がってしまったら
ブースターケーブルの使用方法
できれば新品のバッテリーを買ってきて交換するのが一番良いのですが、ブースターケーブルを使用してエンジンをかける場合はいくつか注意点があります。
- 接続は、救援される側のマイナスが一番最後になります。バッテリーのマイナス端子に接続しないで、ボディ(塗装の無い部分)又はエンジンブロック周辺に接続します。
- ハイブリッド車の補器バッテリーは、救援される側にはなれますが、救援する側にはなれません。(接続位置は取扱説明書で確認してください)
- ブースターケーブルは、内部の電線がなるべく太いものを使用してください。(細いケーブルを使用すると内部抵抗が大きいので、エンジンを始動するだけの電流が流せないだけでなく、ケーブルが加熱して焦げてしまいます。)
その他
- バッテリーにも安価なものから高価なもの、アイドリングストップ対応など色々あります。自分の車にあったタイプを選択するようにしましょう。
- 高性能バッテリーは、長期間に安定した性能を発揮しますが、寿命が近づくと急激に性能が低下するので注意が必要です。
- 電極に付着したサルフェーションを除去する機能がある充電器が販売されています。車を長期間使用しない場合などは、定期的に使用するとバッテリーの劣化が防止できます。
(2023年8月29日公開、作成:三浦敏和)
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