「酒気帯び」にならないお酒の飲み方

自動車全般

飲酒運転による悲惨な事故を根絶するために、道路交通法では罰則強化の改正を行い、その効果は確実に現れているそうです。ただ、飲酒運転をするつもりはないけれど、「飲酒してから何時間後なら運転できるの?」という疑問があります。そこで、年末・年始のお酒を飲む機会が多くなる前に、お酒についての基礎を勉強しておきましょう。

酒酔い運転? 酒気帯び運転?

道路交通法第65条第1項は「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と飲酒運転を禁止しています。ただし罰則を適用する時に、酒酔い(道路交通法第117条の2第1号)、酒気帯び(道路交通法第17条の4第3号)の区分があります。

酒酔い運転

酒酔いは、血中・呼気中アルコール濃度に関係なくアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態かどうかで判断します。言語動作が不明確であったり、歩行状態が不確かであったりなど、酒に酔った状態(酩酊状態)が認められたものは、体内に保有するアルコールの量に関係なく、酒酔い運転の罰則が適用されます。仮に酒気帯び運転の基準値を下回る0.15%以下だったとしても、お酒に弱い方で飲酒の影響が顕著に見られれば、酒酔い運転として処罰されることになります。

酒酔い運転の罰則は、基礎点数35点、免許取り消し、欠格期間3年の重い処分を受けることになります。

酒気帯び運転

酒気帯びは、本人がどんなに大丈夫と主張しようが、実際に運転に支障が無いくらい意識がはっきりしていても検知の結果、呼気中アルコール濃度が基準値(呼気1リットル中につきアルコールが0.15ミリグラム)以上あれば酒気帯び運転となります。

酒気帯び運転の罰則は、呼気1L中に検出されたアルコールの量で判定されます。
0.15mg以上 0.25mg未満で基礎点数13点、免許停止90日
0.25mg以上で基礎点数25点、免許取り消し、欠格期間2年

計算式によるアルコール濃度の求め方

人間の体内に含まれる水分を体重の約70%、水分全体が血液で、血液の成分は純水と同じと仮定し、体重75kgの男性がアルコール濃度5%のビール350ml缶1本を飲んだとします。

体内の水分量は、75000(体重)×0.7(水分の割合)=52500ml(体内の水分量)

摂取アルコール量は、350ml(ビール缶容積)×0.05(濃度)×0.792(アルコールの比重)=13.860g(13860mg)

血中アルコール濃度(理論値)は、13860mg÷52500ml=0.264mg/ml

(酒気帯び運転の取締基準は、「血液1mlにつきアルコールが0.3mg又は呼気1ℓにつき
アルコールが0.15mg」)

アルコールは何時間でなくなる?

体内に吸収されたアルコールは血液に溶解して全身にいきわたます。その広がり方は、性別、年齢、体質、体重、皮下脂肪、酵素、体調、アルコール摂取量、アルコールの種類、摂取時間、摂取後の経過時間等の条件で人によって全く違います。これらの複雑に絡み合っている要素を考慮した、血中アルコール濃度を求める計算方法が上野式算定方式です。

人体中の水分量を考慮し体の中のアルコール濃度をもとめ、そこから時間経過とともに低下していくアルコール濃度を引いていき、現在の血中アルコール濃度を求めるものです。また、体内のアルコールの欠損やアルコール濃度減少率の割合は個人差があるので、最低値と最高値を設定します。

計算式

  1. アルコールの摂取量と男性の体重から理論上の血中アルコール濃度を求めます。
  2. 汗や息で体外に排出されるもの、分解されるもの、体液の種類で溶け方が違うものなど、アルコールの欠損分を補正する(最高値0.8と最低値0.7の2種類を算出)
  3. アルコール濃度は、毎時0.12~0.19㎎/ml減少していくので、飲酒後の経過時間を乗じた値を②から引きます。

(体重75kgの男性がアルコール濃度5%のビール350ml缶2本を飲んだとして、2時間後の例で説明します。)

上記の計算式から

摂取アルコール量は、350ml(ビール缶容積)×0.05(濃度)×0.792(アルコールの比重)=13.860g(13860mg)が2本なので27720mg

体内の水分量は、75000(体重)×0.7(水分の割合)=52500ml(体内の水分量)

血中アルコール濃度(理論値)は、27720mg÷52500ml=0.528mg/ml

最高値(アルコール欠損率小・濃度減少率小)
0.528mg/ml×0.8-0.12mg/ml×2時間=0.1824mg/ml
最低値(アルコール欠損率大・濃度減少率大)
0.528mg/ml×0.7-0.19mg/ml×2時間=0.0104mg/ml

2時間後の血中アルコール濃度は、最高で0.1824mg/ml・最小で0.0104mg/mlになります。
(あくまで理論値です、状況により数値外になることがあります。)

アルコールチェッカーを使いましょう

計算でおおよそのアルコール濃度は計算できましたが、現実問題としていちいち計算できません。
しかも 、計算で求めた数値が実際の血中アルコール濃度と一致するとは限りません。
さらに、酔っぱらっていたら計算を間違えます。

したがって、計算はあきらめて、文明の利器「アルコールチェッカー」というものを使いましょう。
(ネット通販で2000円程度から購入できます。)

最後に、飲んだら乗るな乗るなら飲むなの原則は絶対に守って下さい。

参考資料

イタルダ・インフォメーション(財団法人 交通事故総合分析センター)

(2023年11月13日公開、作成:三浦敏和)

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