ガソリン自動車の触媒

自動車全般

(この記事は、2023年5月5日に作成、サイト整理により2023年8月29日に転載しました。)

自動車の排気ガスに含まれている環境や人体に有害な化学物質をきれいに浄化する触媒があります。外観は金属の筒の中にハチの巣が入っているようなもの。排気ガスがこの中を通るだけで浄化できるのは不思議です。今回は、ガソリンエンジン車の触媒について調べてみました。(ディーゼルエンジン車の排ガス浄化装置は以前の記事を見てください)

ガソリンエンジン車の排気ガス浄化装置

触媒とは何?

ガソリンエンジン車は、燃料を燃焼させて動力を得ることで、排気ガスを発生させます。その排気ガスには、人体や環境に有害な物質が含まれており、自動車排出ガス規制によって厳しく制限されています。そこで、排気ガスの浄化に欠かせない装置が触媒です。触媒とは、それ自体は変化しないまま、特定の化学反応の速度を変化させる物質のことです。例えば、人が食事をすると、消化酵素の働きにより炭水化物はブドウ糖に、タンパク質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸等に分解されます。この消化酵素のように、そのもの自体は反応の前後で状態が変化せずに、化学反応を手助けするものを触媒と呼びます。自動車用の触媒は、排気ガス中に含まれる有害物質を無害な物質に変換するために使われます。触媒は、エンジンから出る排気ガスの不純物を除去し、浄化処理する排気システムの一部です。

ガソリンエンジン車の触媒

ガソリンエンジン車に使われている代表的な触媒は、三元触媒と呼ばれるもので、排出規制物質である炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を同時に無害化することができます。 その仕組みは以下のようになります。

  • 三元触媒は、排気管の中に設置された金属製やセラミック製のハニカム構造の触媒担体に、貴金属(プラチナ、パラジウム、ロジウム)を担持させたものです。
    排出ガスが触媒担体を通過するとき、貴金属が触媒作用を発揮して、酸化反応と還元反応を起こします。
    酸化反応では、COとHCが酸素と結合して二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に変わります。還元反応では、NOxが窒素(N2)と酸素(O2)に分解されます。
    これらの反応によって、排出ガス中の有害な成分が無害な成分に変換され、大気汚染を防ぐことができます。
  • 三元触媒は、燃焼時の空燃比が理論空燃比(完全燃焼が起こる空燃比)に近いときに最も効果的です。そのため、エンジンコントロールユニットや酸素センサーなどで空燃比を制御することが重要です。また、三元触媒は高温でないと正常に働かないため、エンジン始動直後や低負荷運転時には浄化能力が低下します。そのために、エンジンの直後に設置したり、アイドリング時に排気管内に二次空気を導入して排気温度を上昇させるなどの対策がとられています。
出典元:東北大学 材料科学高等研究所

三元触媒の技術開発

自動車用三元触媒の価格は、原材料の供給と需要によって大きく変動します。三元触媒は、主に白金、パラジウム、ロジウムなどの貴金属を含んでいます。これらの貴金属は、地政学的な緊張や採掘コストの高騰などの要因で価格が上昇しやすく、それが三元触媒の価格にも影響します。また、自動車市場の拡大や環境規制の強化も、三元触媒の需要を高めています。このように、自動車用三元触媒の価格は、様々な要素に左右される不安定なものです。2008年に発表された日産の超低貴金属触媒は、従来の貴金属使用量を75%低減でき、且つ従来と同等のクリーンな排気ガスを実現する新触媒。クルマの触媒に使われるPt(プラチナ)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)全ての貴金属に適用でき、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンはもちろん、自動車以外の触媒についても適用できる。貴金属使用量50%低減触媒を2008年発売キューブに世界初採用。75%低減触媒を2012年から国内外の車種に採用されています。

出典元:日産自動車ニュースルーム

(2023年8月29日公開、作成:三浦敏和)

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