(この記事は、2022年3月20日に作成、サイト整理により2023年8月25日に転載しました。)
2022年1月、環境省から「自動車NOx・PM法」の対策地域 2022年から指定解除へ、270市区町村の大半が解除対象と発表がありました。「カーボンニュートラルを目指しているこのタイミングでなぜ?」と思ったので調べてみました。
「自動車NOx・PM法」とは
正式には「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」といいます。自動車交通が集中し、自動車から 排出される「窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)による大気汚染」がひどい、圏大都市圏で、ディーゼル自動車に対して特別の規制を行い、二酸化窒素(NO2)と浮遊粒子状物質(SPM)についての大気 環境基準を達成することを目的に作られました。
「自動車NOx・PM法」制定の背景
大気汚染対策として、工場などの規制や自動車の排出ガス規制(基準を満たす排ガス性能を持つ車両のみを製造・輸入・販売させる規制)を行ってきたが、関東や関西の大都市圏で窒素酸化物(NOx)による大気汚染が深刻であることから自動車NOx法(平成4年)により国による基本方針、自治体による削減計画、トラック・バスなどの車種規制(排気ガス濃度が基準を満たしていない車両の新規登録、移転登録及び継続登録をさせない規制)を行った。
しかし、交通量の増加などによりNO2の削減計画を達成することが困難な状況になった。一方、浮遊粒子状物質(SPM)による大気汚染も厳しい状況にあり、ディーゼル車から排出される粒子状物質(PM)については、発がん性のおそれなど健康への悪影響が懸念された。
そこで、NOxに対する従来の施策を更に強化するとともに、自動車交通に起因するPMの削減を図るため、平成13年6月に自動車NOx法の一部が改正され、いわゆる自動車NOx・PM法が制定された。対象地域も従来の首都圏、大阪・兵庫圏の196市区町村から新たに愛知・三重圏の地域が追加され276市区町村が指定された。
さらに、平成20年1月にも改正され、大気の汚染が特に著しい地区において、対象地域の事業者へNOx、PMの排出の抑制のための措置を拡充することなど一部強化された。
なお、自動車NOx・PM法に基づく車種規制では対象地域外に使用の本拠のある車が対象地域内に流入してくることを阻止することができないため、各自治体はディーゼル車規制条例により基準に適合しない車の流入を禁止している。
「自動車NOx・PM法」の規制対象地域
埼玉県
川越市、熊谷市、川口市、行田市、所沢市、加須市、本庄市、東松山市、岩槻市、春日部市、狭山市、羽生市、鴻巣市、深谷市、上尾市、草加市、越谷市、蕨市、戸田市、入間市、鳩ヶ谷市、朝霞市、志木市、和光市、新座市、桶川市、久喜市、北本市、八潮市、富士見市、上福岡市、三郷市、蓮田市、坂戸市、幸手市、鶴ヶ島市、日高市、吉川市、さいたま市、北足立郡、入間郡大井町、同郡三芳町、比企郡川島町、同郡吉見町、児玉郡上里町、大里郡大里町、同郡岡部町、同郡川本町、同郡花園町、北埼玉郡騎西町、同郡南河原村、同郡川里町、南埼玉郡及び北葛飾郡
千葉県
千葉市、市川市、船橋市、松戸市、野田市、佐倉市、習志野市、柏市、市原市、流山市、八千代市、我孫子市、鎌ヶ谷市、浦安市、四街道市、白井市及び東葛飾郡
東京都
特別区、八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、青梅市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、国分寺市、国立市、福生市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、羽村市、あきる野市、西東京市、西多摩郡瑞穂町及び同郡日の出町
神奈川県
横浜市、川崎市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、逗子市、相模原市、三浦市、秦野市、厚木市、大和市、伊勢原市、海老名市、座間市、綾瀬市、三浦郡、高座郡、中郡、足柄上郡中井町、同郡大井町、愛甲郡愛川町及び津久井郡城山町
愛知県
名古屋市、豊橋市、岡崎市、一宮市、瀬戸市、半田市、春日井市、豊川市、津島市、碧南市、刈谷市、豊田市、安城市、西尾市、蒲郡市、犬山市、常滑市、江南市、尾西市、小牧市、稲沢市、東海市、大府市、知多市、知立市、尾張旭市、高浜市、岩倉市、豊明市、日進市、愛知郡、西春日井郡、丹羽郡、葉栗郡、中島郡平和町、海部郡七宝町、同郡美和町、同郡甚目寺町、同郡大治町、同郡蟹江町、同郡十四山村、同郡飛島村、同郡弥豊町、同郡佐屋町、同郡佐織町、知多郡阿久比町、同郡東浦町、同郡武豊町、額田郡幸田町、西加茂郡三好町、宝飯郡音羽町、同郡小坂井町及び同郡御津町
三重県
四日市市、桑名市、鈴鹿市、桑名郡長島町、同郡木曽岬町、三重郡楠町、同郡朝日町及び同郡川越町
大阪府
大阪市、堺市、岸和田市、豊中市、池田市、吹田市、泉大津市、高槻市、貝塚市、守口市、枚方市、茨木市、八尾市、泉佐野市、富田林市、寝屋川市、河内長野市、松原市、大東市、和泉市、箕面市、柏原市、羽曳野市、門真市、摂津市、高石市、藤井寺市、東大阪市、泉南市、四条畷市、交野市、大阪狭山市、阪南市、三島郡、泉北郡、泉南郡熊取町、同郡田尻町及び南河内郡美原町
兵庫県
神戸市、姫路市、尼崎市、明石市、西宮市、芦屋市、伊丹市、加古川市、宝塚市、高砂市、川西市、加古郡播磨町及び揖保郡太子町
車種規制の対象
車両総重量1.7t以下のトラック・バス
KP-,HW-,KE-,HA-,KA-,S-,P-,N-,K-,L-,J-, H-,記号なし
車両総重量1.7超2.5t以下のトラック・バス
KQ-,HX-,KJ-,HE-,KF-,HB-,KB-,S-,P-,N-,K-,T-,L-,J-,H-,記号なし
車両総重量2.5超3.5t以下のトラック・バス
KR-,HY-,KG-,HC-,KC-,U-,S-,P-,N-,K-,Z-,T-,M-,J-,記号なし
車両総重量3.5超のトラック・バス
KC-,W-,U-,P-,N-,K-,Z-,T-,M-,J-,記号なし
乗用車
KM-,KN-,HT-,HU-,KH-,HD-,KE-,HA-,KD-,Y-,X-,Q-,P-,N-,K-,記号なし
「自動車NOx・PM法」運用の現状
対策地域に指定されている8都府県中、NOx排出量については7府県、PM排出量は全都府県が2020年度の削減目標を達成している。また「エコドライブ」の効果で約2割の燃費改善が確認されており、環境省はこうした燃料消費の削減がNOx、PMの排出削減にもつながっているとした。
その一方で、EVなど環境性能の高い車両への代替が進む見通しのため、5年後をめどに制度の在り方について改めて検討すべきとの方向性を示した。
要するに、すでに多くの地域で目標を達成しており、今後は規制の対象となる車両の残存数が減少し、環境性能の高い車両が増加していくことから特別措置法として規制する必要がなくなったといううことです。
また規制地域の各自治体では、法律を管理・運用するために多額の費用を必要とするので、自治体の負担軽減のためにも早期に規制解除の方向で検討することになったようです。
参考資料
自動車NOx・PM法について(環境省)
自動車NOx・PM法の概要(PDF)(環境省)
関連情報(追加情報)
令和4年4月1日「大阪府生活環境の保全等に関する条例」が改正され、大阪府は流入車規制を廃止しました。 流入車規制(令和4年4月1日付け廃止)/大阪府(おおさかふ)ホームページ [Osaka Prefectural Government]
(2023年8月25日公開、2024年10月21日更新 作成:三浦敏和)
コメント
東京でも桧原村や奥多摩町では乗れるのかな?
自動車NOx・PM法では対象外の区域ですが、東京都は自治体によるディーゼル車規制があり、「東京都環境確保条例」で定める粒子状物質排出基準を満たさないディーゼル車は、東京都内の走行を禁止しています。
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/vehicle/air_pollution/diesel/regulation/detail