EVバッテリー技術その2

自動車全般

(この記事は、2021年11月21日に作成、サイト整理により2023年8月25日に転載しました。)

リチウムイオン電池は、正極と負極を持ちその間をリチウムイオンが移動することで充放電を行う二次電池のことです。(くりかえし充放電が可能なものを二次電池、使い切りのものは一次電池)大容量の電力を蓄えることができ、携帯電話やPCのバッテリー、産業用ロボットや自動車など幅広い用途で使用されています。
電池の形状や正極・負極に使用する素材の違いなどで特長が異なり、リチウムイオン電池の中にも様々な種類があります。主な種類は、コバルト系・ニッケル系・マンガン系・三元系・チタン酸系・リチウムポリマー系・リン酸鉄系などがあります。

コバルト酸リチウム

正極にコバルト酸リチウム(LiCoO2)、負極に黒鉛を用いたリチウムイオン二次電池の原型。(発明者の吉野彰博士がノーベル化学賞を受賞しています) コバルト酸リチウムは合成が比較的容易で取り扱いやすいことや,作動電圧が高く,優れたサイクル寿命を示す等の長所がある反面、短所として過充電になると酸素を放出すると同時に発熱量が増加して熱暴走による発火の危険性があるため車載用への応用は安全性に課題がある。また、コバルトは希少金属で高価で価格の変動も激しいことも問題になる。

  • メリット・・・作動電圧が高い・サイクル寿命が長い・生産性が高い
  • デメリット・・・コストが高い・発火の危険性がある

ニッケル酸リチウム・NCA系

正極にニッケル酸リチウム(LiNiO2)、負極に黒鉛を用いたリチウムイオン二次電池。 エネルギー密度はコバルト酸リチウム大きいが、サイクル寿命が短く、充電状態での熱安定性に問題がある。ニッケル系のなかでもNCA(ニッケル、コバルト、アルミニウム)系と呼ばれるタイプは、安全性を高めるために、負極上にセラミックス層をコーティングすることなどにより耐熱性を高め、安全性を強化している。

  • メリット・・・エネルギー密度が高い
  • デメリット・・・安全性が低い(NCAは対策済み)・サイクル寿命がやや短い

マンガン酸リチウム

正極にマンガン酸リチウム(LiMn2O4)、負極に黒鉛を用いたリチウムイオン 二次電池。三元系やNCA系に比べ理論的なエネルギー密度は低いが、熱安定性に優れるので急速充放電が可能。マンガンは、コバルトやニッケルに比べ、原材料価格が安いためコストメリットにも優れる。日産、三菱、BMW、GM他多くのメーカーが採用している。

  • メリット・・・安全性が高い・コストが低い
  • デメリット・・・エネルギー密度が低い

三元系リチウム(NMC)

正極にコバルト、ニッケル、マンガンの3つを使用(Li(Ni-Mn-Co)O2)、負極に黒鉛を用いた リチウムイオン二次電池。 エネルギー密度が高く、サイクル寿命も長い、低温時にも比較的安定した出力が得られる半面、希少金属のコバルトを使うためにコストが高い。

  • メリット・・・エネルギー密度が高い・サイクル寿命が長い・低温で出力の低下が少ない
  • デメリット・・・コストが高い

リン酸鉄系(LFP)

正極にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)、負極に黒鉛を用いた リチウムイオン二次電池。ニッケルベースの化学組成に比べて電圧が低く・エネルギー密度も低いもののコバルトやニッケルのような極めて希少で価格が変動しやすい原料に依存せず、鉄とリン酸という2つの安価な材料が主な原料となるので安価で安定した生産量を確保できる。1台あたりのコストを下げることが重要なエントリーレベルの低価格車に使用される。

  • メリット・・・低コスト・安定供給が可能・安全性が高い
  • デメリット・・・デメリット・・・エネルギー密度が比較的低い・低温で出力の低下が多い

全個体電池など

全固体電池は現在開発が進められている電池で、まだ本格的な実用化には至っていません。リチウムイオン電池の一種ですが、電解液が使用されていないことが大きな違いです。長所とし電解液を使用しないため、変形・衝撃による発火の危険性が低く、より安全性が求められる現代において、各分野での実用化が進められています。また、作動温度範囲が広い、設計の自由度が高い、劣化しにくい、生産性が高いことなども挙げられます。
ほかにも、リチウム硫黄電池、金属空気電池、ナトリウムイオン電池、多価イオン電池など研究が進められています。

(2023年8月25日公開、作成:三浦敏和)

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